かゆみを感じる
きっと満足いていないのだろうと、ここまでのものを提供したとしても。しかし、それでも、最善を尽くしたという印象だけでも受け取ってもらえれば、それが限界なのだから。だけれども、どこまでなのか、きっとあなたは自分自身でもわかってはいないに違いない。それは、私自身もまたどこまでなのかが、わかっていないのだから。
体にちょっとしたかゆみを感じる。だけれども、それがどこで感じられているのかはわからないので、だから、それを何とか抑えようとして、求める。だけれども、欲求は、そのでどころが不明であるが故に、満たされることもないのかもしれないと、そして、肉体の限界まで、彼は、進もうとする。
少し距離を取って。だけれども、その距離を詰めた方がいいとも感じながら。決定的な距離をあなたとの間に感じている、どこまでも近づいていこうとしても、あなたは少しだけ遠ざかろうとする、だから、私は、それ以上は近づこうとはしないで、だけれども、少しだけでも離れすぎると、あなたは、私に近づこうとする。あなたの何かを、感じる、私にはない何かの感情を。
そして、彼は、一人ため息をつくようで。もう、多くを求めずに、ただ、相手が満足してくれることだけを目標にして。そして、彼は死んでいく。むしろ、死んでいく。死に行くことを求めている。彼が彼であろうとするほどに、相手が遠ざかって行ってしまうように感じて。だから、彼は死に行くことで、むしろ、行きようとする。彼の満たされない欲求は、だから、永遠に満たされることはなく、そして、いずれにせよ偽り続けることで。
あなたは、本当に、何を感じているのだろうか。そのあなたには、私は、何を感じ取ればいいのか。あなたを感じるようで、あなたが感じられない。遠くから見るあなたのそのあなたそのものが近づけば近づくほどに消え去っていくようにも感じる。だから、むしろ、私は、あなたから遠ざかればいいのだろうか。だけれども、時々見せるあなたの遠くを見る視線が。
彼は、全てを見失っている。全てが崩れ去ってしまったのだから。もう、彼には、彼自身は存在しない。崩れ去ったものをくみ上げて、無理矢理縛り付けて、自分自身を構築いているように装ってみたが、しかし、それはあまりにも脆弱で、偽りに満ちていて、そう、そもそもから、存在することが出来なかったのだから、だから、存在しようと彼が努めれば努めるほどに、存在することが困難になるしか無く、だから、彼は、むしろ存在を捨てることで、その崩れ去ったものを認めることで、肉体を失った魂としてだけ、偽りの存在としてだけ、そこに、虚像を構築いて、存在することを選んだ。彼は、何も感じないことで、相手を感じる。そこい、偽りの世界にある、想像の中で描いたそれらしき感情を生成して、それに浸る。全く実感のない幸福に、ようやく浸る。
まるで、空気を掴んでいるように。近づいても、感じることは出来ない。全てを受け入れてくれるようで、全てが受け流されてしまっているだけのようで。あなたは、どこにいるのか。私は、ここにいるのに、あなたは、どこにいるのか。
彼は、そこにたたずむ、内部にあった空虚を、その外部にまでもはみ出させて、その存在全てが空虚になる。そして、満たされることはなく、そして、満たすことも出来ないのだろうかと。

