場所
この場所のどこまでもが、あなたの場所だから。そこに果てがあるのかどうかさえもわからないほどに、あなたよりもあまりにも大きな場所が。不案内に、見果てぬこの場所を眺めているのだろう。
まるで、風雨にさらされているかのように感じながら、じっと耐えながら、時に覗き込む。風雨が常に、肌をなめていく。いくら小さくなっても、そこにある場所は、彼一人をなんとか抱え込むほどでしか、まだ無くて。だけれども、時に、風雨は、彼の元から離れていく。その時にこそ、大きくのびをして、周りを見渡して、その広い世界を。そして、その広い世界への理解を深めながら、その彼自身の場所を拡張していく。
やがて、また風雨がやってくる。別に彼を排除しようとしているわけではなくて、ただそこがそういう場所であると言うだけで。そして、彼はこの場所に降り立ったのであるから、ただ、この場所を生き延びるしかない。
やがて、あなたは、空高くさえ跳ぶことが出来るかもしれない、この場所で。大きな場所をここに見いだすかもしれない、あなたは。私には、そうしか言うことが出来ない。あなたの不安が、私には苦しいほどにわかる。実際、むしろ私の心は破壊されてしまいそうに、その不安を過剰に受け取っている。だけれども、気にすることはない。そこは、あなたの場所だから、あなたの不安は同時に、あなたの自由でもあるのだから。
遠くまで、歩いてみることにした。彼は、一時的に自分の場所から離れた。いつ戻ってくるかわからない風雨の恐れを押しのけて。しばらく歩いて、疲れ切って、そして、彼は戻る事にする。何を求めて歩いたのか、そして、何を得たのか、何故、ここで戻ることにしたのか。説明することは出来ない。そして、彼の場所に戻る。戻る場所がそこにあったということ。そこでは、疲れが解消されていく。彼だけの場所、彼のための場所、彼が築き上げた場所。
知りはしないかもしれない。知ることさえないかもしれない。私も全て知っているわけではない。いや、むしろほとんどの事を知らない。だというのに、こんなに偉そうなことをあなたに告げているのかと思うと、愚かしく感じられてくる。
そこに作りあげた場所が、どの程度なのかは、わからない。あまりにも広い場所がそこにあるのだから。その場所は、一体何によるのだろうか。確かに、その場所は果てしない。わからないことだらけで。小さなその場所を何とか作りあげて、風雨から身を守る。
あまりにも広い場所に怯える。そこに作りあげた場所の中に、時に閉じこもる。虚勢を張りながら、逃げ隠れし、大手を振って歩きながら、身構える準備をする。だけれども、この広い場所は、やはりあなたの場所であるのだから、そこはあまりにも広すぎるとはいえども、もしくは、そこはあまりにも狭すぎるといえども。そっと見守る。

