Information
- About
0.はじめに
”転生夢現”は、日本語翻訳版としては2008年に出版され作品で、中国では2006年ごろに”生死疲労”というタイトルで出版されたもの。上下巻に渡る大著。
この大著に渡って一族の物語が語られるのだけれども、ただ語るだけではないのが、莫言の莫言たるところで、この一族の発端と言うべき西門鬧が動物として次々と生まれ変わってメインの語り手となる。ちなみに、その他に、藍解放が語り手となり、また作中人物として”莫言”が登場し、作中に用意された”作品”が引用されると共に最後の場面の語り手となる。
1.全景
この作品を通じて描かれるのは、1950年から2000年にい当たる半世紀の中国における、ある農村の様子。この場所を仕切っていた西門鬧が、改革の中で殺害されるところから始まり、その後の政治的変革の中で時代の変化に流されながら、時にその時代に翻弄され、時にその時代を利用していく藍金竜、藍解放の義理の兄弟を中心とした一族を描いた物語。
2.転生
この物語の最大の特徴は、やはり、この物語の話者である西門鬧の生まれ変わりの動物たち。最初は、ロバとして生を受けて、その後牛、豚、犬、猿、そして最後についに大頭の人間へと生まれ変わる。そして、その動物たちが描く物語は、一方で眺めている物語の話者としてだけではなく、その動物自身のエピソードも交えた物語でもある。
そして、この動物たちの境遇が、当然重要な要素である。それは、単純に物語り全体にアクセントを加えると言うだけではなくて、その動物の境遇が象徴的に示している時代描写にもある。
3.マッチョな動物
まずは、この動物たちであるけれども、彼らは常にマッチョな存在として、動物界では一目おくべき存在であり続ける。そして、この動物としての立場も徐々に変化していって、ロバ、牛時代には特筆すべき存在でありながらも孤高の印象が強かったところが、豚、犬となってくるとグループを統率するリーダーとしての存在へと変化する。猿としてはほとんど描かれてはいないのだけれども、ここではまた孤高の存在となっている様に思われる。この動物として、マッチョでありながら、その動物社会における位置づけの変化が示唆するところはとても大きいと思う。
また、その転生の順序が、ロバ、牛、豚、犬、猿、大頭の人間であることも重要なポイントだと思う。それは、農耕というものの変化から、畜産へと変化し、やがて工業化、商業化し、21世紀にいたるという時代の変化。それに対応する動物の特性。
このように、かたや動物を利用して象徴的に、つまり客観的に物語を描きながら、一方で社会の変化をデフォルメを加えた写実として描くというこの話法はすばらしい効果を物語全体に与えていて、ただの時代小説でもただのファンタジーでもない莫言ならではの世界になっている。
4.組織から個人へ
一方で、物語全体の展開だけれども、藍金竜、藍解放という異父兄弟のその似て非なる特性を中心に時代変化をうけての振る舞いの変化が中心話題である。個人農家であることに維持を張り続ける二人の父藍瞼。その父(藍金竜によっては義理の父)の元を離れて、集団農家の側に立ち、やがて共産主義の指導者的な立場へとのし上がっていく藍金竜。一方、しばらくはその父(藍解放によっては真の父)のもとにしばらくいたもののやがて、その父の元を離れる藍解放。そして、二人は恋愛沙汰の中で気を狂わせた後に結婚して再び、のし上がっていく道を進み、県の中枢へと向かうのだけれども、しかし、やがてまた破滅を迎える。
この時代の変化への対応の中でも興味深いのは徐々にそれぞれの人物の行動が、組織に対する行動から個人としての利害関係への行動へと変化していくところ。集団農業や共産主義組織、そして、家の意志による結婚。これが最終的には、個人の利害を元にした会社の設立、そして、不倫へと。そして、それぞれにあるそれぞれの意味を、飾り立てることなく、善悪の判断を強いることなく、ただ描いていることがまたこの作品のすばらしいところ。集団や組織に意志決定を強いられることの善悪。一方で、個人の利害にのみ走ることの善悪。藍金竜は、その不正が危機を迎え、藍解放は不倫の末に街を離れることになる。さらに、その子供たちは、より自由な振る舞いの中で組織とは全く離れた生き方を選択していて、しかし、その最後はというと。
そう、そして、再び一族は元の場所に集結する。そして、一人ずつ死んでいく。そして、一人の子供が生まれる。藍千歳、それは、西門鬧の最後の生まれ変わりでもあり、そして、新世紀の始まりとともに、この物語は終焉する。
あまりにも、壮大でありながらも、個人の感覚を見事に捉えた物語がここに終わる。
5.ガルシア・マルケス
莫言というとガルシア・マルケスがしばしば引き合いに出されるけれども、この作品を読むと、どうしても、ガルシア・マルケスの”百年の孤独”思い起こさずには居られない。
”百年の孤独”もある一族をその時代における変化も交えながら描きつつ、最後には赤ん坊が登場するという展開となる。当然、莫言がこの作品を知らないわけはないので、勝手な憶測をしてみると、全体の構成において、どこか、オマージュというのか、意識したところはあるのではないかと思いたくなる。まぁ、私の勝手な憶測はおいておいて、しかし、この”転生夢現”は間違い無く"百年の孤独"と並び称されるべき作品だと思う。それは、この二つの作品が類似しているという意味ではなくて、似て非なる物としてそれぞれにそれぞれのすばらしさを持ちながら、時代の変化と個人の変化を描き上げているという意味としてである。
- Book Review
- 転生夢現 (2008) : novel,Book
- 四十一炮 (2006) : novel,Book
- 至福のとき―莫言中短編集 (2002) : novel,Book
- 豊乳肥臀 (1999) : novel,Book
このサイトにレビューを掲載しているもののみ表示しています。完全な作品リストではありません。
Google Search Information
- Web Search Results from
:::Google Ajax Search






















![TVパーティー・エピソードBOX SET [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/41un7zP6t1L._SL160_.jpg)


