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殺人者を殺せ

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0.はじめに

さて、知らない間にこっそりと刊行されていくヘンリー・ミラー コレクションですが、その第10巻にあたる「殺人者を殺せ」は、ヘンリー・ミラーのエッセイを収録した作品。ちなみに、巻末の解説によると、当初掲載予定であった「冷蔵装置の悪夢」や「わが生涯の読書」といった、代表的なエッセイは、この巻に収められる予定から、別途全訳刊行する方向性へ変更になったとのこと。まぁ、このヘンリー・ミラーコレクションの遅々としてすすまぬ刊行ぶりからすると、これらはいつになったら刊行されるのかは・・・ですが。

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1.前半の内容

内容の方は、まずは前半戦は、ヘンリー・ミラーの特徴の一つとして性に対する描写があるだろうけれども、そのあたりの性に関することを中心話題としたエッセイが収められる。ヘンリー・ミラーの文章というと、例えそれが小説であっても、いわゆる小説としての整然とした起承転結ではなくて、発想が発想を呼びながら展開していく自由奔放な構成をもって、さらにその文章内容やそこに描かれる人々の生活そのものも自由奔放。そのことを考えると、ここでエッセイとして描かれる世界も、自由奔放さを強く感じさせる物かと思いきや、そうではなくて、哲学的にも、そして、生活者としても非常に深い考察が為されていて、この前半戦の性に関するエッセイにしても、非常に深い考察があって、単純に奔放な性を闇雲に主張しているのではないのが分かる。勿論、この深さがあるから、彼の作品が、ただ性的なことだけをもって、評価されているのではないことにも繋がる。

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2.後半の内容

後半戦は、さらにより深い考察へと入っていく。特にハイライトは、タイトル作品でもある「殺人者を殺せ」。これは、第二次大戦にたいする強烈な反戦文章である。

ここでは、彼がどれほどの平和主義者なのかがよくわかるし、そこには、彼が描く自由奔放な人々の様子は、利己的なのではなくて、むしろ、非群衆的行動であるという捉え方をすべきなのだということを改めて感じさせられる。思想の異なる物は絶滅させるしかないという強烈な言葉は、むしろ逆接的で強い皮肉でもある。確かに、それは的を射ている。異なる意見同士を対立させても、対立は平衡には至らず、対立のまま残存し続ける。唯一の解決は、相手を絶滅させるしかないと。しかし、これが示唆するのは、絶滅は不可能であるのだから、対立を対立として解決しようとしても意味が無いということであり・・・。

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3.おわりに

ヘンリー・ミラーの思想に触れるという意味では、これはとてもいいエッセイだと思う。小説でその世界に興味を持った人であれば、是非とも読むべき物だと思うし、比較的読みやすいと思う。

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