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ソラリス

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1.概要

タルコフスキー(惑星ソラリス)やスティーヴン・ソダーバーグ(ソラリス)による映画化のために、もしかすると映画のほうが有名かもしれないが、SF史上に残る名作の一つがスタニスワフ・レムによる「ソラリス」。

ソラリスの生物とも鉱物ともいえぬ”海”を相手にする物語。基本的には、その海の調査に乗り込んだ調査団に起こる現象を描く物語なのだけれども、この”海”については、既に多くの研究がされていて、膨大な資料が残されているという設定になっている。この膨大な資料が残されていて、様々な論争と様々な仮説が既に唱えられた末に、未だに真実に行き当たらずというあたりのバックグラウンドの設定までちゃんとできあがっているのが、いかにもレムらしく。そして、その論争の展開も、現実の科学世界にありがちな印象があるところも、レム的というか、若干メタ的に当てこすろうという感じで、レムの良さでもあり悪さでもあると思う。

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2.詳細−三つの側面

この作品って、いくつかの側面を持っていると思う。それぞれ、科学的側面、恋愛的側面、哲学的側面とわけて、順番にこれ以降にまとめていく。

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2.1科学的側面

まずは、科学調査的側面で、これは、先述のように様々な仮説が上げられて、その仮説を元に探索していくというあたりが、SF好き科学好きの感情をそそる。調査と仮説の繰り返しによって、真実に近づこうとする行為は科学的で面白い。特に、よくわからないものにあいたしたときには、論理だけでは真実に近づくのが困難な場合がある。一方で、ただ現象を記録するだけでは、何も解明されていかない。そこで、現象を分析して、仮説をたててその仮説を実証するために調査する。時にうまくいくし、時にうまくいかない。そして、様々な説が不明な真実を前にして対立するということはしばしば発生する。

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2.2恋愛的側面

それから、もう一つが恋愛的側面。この作品の大きな注目点は、鉱物であるはずの”海”が人間の感情にまで作用してくるということで、この作用によって、この主人公にも、過去の生活が介入し始める。そこで、発生する感情に恋愛に対する感覚が関連しはじめる。この恋愛感情がさらに起こす葛藤。これも読み応えのある展開に繋がっていく。恋愛的側面の中には、単独であることが困難であると感じる感情の側面も含まれているのかもしれないし、人間が常に背負いがちな過去という存在が引き起こす後悔という感情とやり直しという願望も含まれているようにも思う。

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2.3哲学的側面

それから、哲学的側面。レムの作品には、SF的なだけではなくて、哲学的な要素が感じられるところが多いけれども、ここにもその要素が読み取れる。それは、先述の恋愛感情が関連してくる事によって、そこから、さらに恋愛感情における葛藤が恋愛時の葛藤のみではなく、それが実在なのか実在ではないのか、存在としては不在ではあるけれど、感情としては実在であると捉えるべきなのか、いや、本人はそのように捉えたいと感じているのか。要するに、人間の存在とは、脳の中なのか外なのかという議題であるとも感じ取れてくる。いずれにせよ、それぞれの個人の中では、脳が捉えた世界がこの世の中の全てであって、それが外界で起こっている事なのか内界で起こっているのかという分離は非常に困難であるし、そこにセンサーとしての感覚機能だけではなくて、感情が入り込んだときには、かならず内界と外界の衝突であったり、ずれであったりが生じる。それは、人が時に精神的に困難な状態に陥ったり、幻覚が生じたりするという明確な形で異常と診断される現象として扱われる場合もあるだろうが、基本的には、異常と診断されないレベルであれば、全ての人がこの内界と外界の差異を感じながら、感覚と感情を脳の中で扱いながら生きている。そのあたりの人間の存在が、この”海”を通して、人間に発生する恋愛感情によって、表現されているように思う。つまり、この感情をどう扱う事が出来るのか、この感情から離脱することは出来るのか、この感情を放棄する事が出来るのか。時に、人間は端から見れば、感情に支配されるあまりに間違っているのではないかという選択肢を選択するが、しかし、当事者にしてみれば、その感情に支配された行動こそが正しい選択であると判断出来てしまうのは、それは当然のことなのかもしれない。感情が脳の中でどこからどのように発生しているのか、それが物理的にはどのように扱われるべきなのかは、依然として不明な現象である。その不明な感情によって、しかし人間の存在はある種の特徴を生み出して、そして、他の生物には為し得ない事を為しているともいえると思う。その人間の特殊な存在が、”海”という特殊な存在を通して、この”ソラリス”の中では見事に描かれているように思う。

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3.まとめ

哲学的な要素を持ちながら、誘導的に哲学的回答へ安易につなげてしまいがちなレムの特性が見え隠れするところもあるが、この作品は比較的成功している作品だと思う。読みやすさと深さをぎりぎりのところで両立させた名作ともいえる。

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  • Book Review
  • 枯草熱   (1976) : novel,Book
  • 天の声   (1968) : novel,Book
  • ソラリス   (1961) : novel,Book
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